アメリカ駐在からの帰任が決まったら、帰任に向けて様々な準備を行わないといけません。
その中でもかなり重要度が高い案件の一つが、アメリカ駐在中に使用していた銀行口座の解約です。
Goldman Sachsの銀行口座、JPMorgan Chaseの銀行口座、Bank of Americaの銀行口座などなど、日本ではまず作れない世界トップに君臨する正真正銘のメガバンクの銀行口座をせっかくだから帰国後も維持したいと思うのは人情でしょう。
しかし、現実問題として「維持すべきなのか」、はたまた「維持できるのか」という命題が存在します。
この記事では、アメリカ駐在が終わり帰任が決まった人のため、帰任時の銀行口座の取り扱いについて持論を述べていきたいと思います。
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帰任後もアメリカの銀行口座を維持するメリット
個人的な意見からすると、アメリカに銀行口座を残していくメリットはあるようで実はほとんどないと思っています。
アメリカの銀行口座を保持しておきたい理由として第一に上がるのが「預金金利が高いから」です。
確かに、アメリカの銀行口座(特にSavings口座)は預金金利が非常に高く、超低金利の日本にお金を戻すよりはアメリカに置いておくほうがいいと考える人もいるかもしれません。
➡ 【驚異の利率】アメリカンエキスプレスのHigh-Yield Savings Accountのメリット、デメリット。 - 米国の僻地で暮らす駐在員のブログ
しかし、これは本当に本当にそうなのでしょうか?
最近では日本のメガバンクが外貨預金の金利を大幅に引き上げ話題になりましたし、外貨建MMFなどの金融商品を活用すれば、日本国内にいながらアメリカの金利に近いリターンを比較的安全に得ることも不可能ではありません。
すなわち、「アメリカの銀行に預けておくことが重要なのではなく、これら利回りの高い金融商品にアクセスするためにはドルを持っておくことが重要」なのであって、日本のドル口座(或いはドル建ての証券口座)に送っちゃえばいいと思うわけです。
帰任後もアメリカの銀行口座を維持すべきか
その上で、帰任後もアメリカの銀行口座を維持すべきかという問いに答えなければなりません。
この点に関しては、個人的には「維持しないと困ることが結構たくさんあるので維持したほうが良い」というスタンスです。
具体的には、帰国後にやってくる各種支払のために口座を残して置くことをおすすめします。
クレジットカードであったり、家賃や光熱費、オートローンなど現地での支払いが出国前に完全に終わるのであれば問題ないですが、最後に「敷金のようなデポジットが返金されてくる」みたいなケースもあるので、アメリカに口座を残しておくに越したことはありません。
いつまでアメリカの銀行口座を維持するべきか
上記の場合、全ての精算が終わってしまったあとはほぼ休眠口座状態となるでしょう。
ここで注意しておかなければならないことは、一定期間休眠状態が続くと、口座に残っている預金は州政府に没収(Escheatment)される可能性があることです。
条件は州によって異なり、「休眠状態」の定義も各銀行によって異なるため、一概に何年後とは言えませんが、長い間維持するのであれば定期的にお金を左右に動かさないといけないことに留意しておきましょう。
これらのEscheatmentの条件などは、口座開設時にもらった契約書や各銀行のホームページなどに掲載されているはずなので、心配であれば事前に目を通しておきましょう。
以上のことから、「維持しないと困ることが結構たくさんあるので維持したほうが良いが、全ての精算が終わり次第すみやかに銀行口座を解約するべき。」というのが一番私の持論に近いと思います。
アメリカの銀行口座を維持する際に重要なこと
短期間であれ、長期間であれ、帰任後もアメリカの銀行口座を維持する上で重要なことがいくつかあります。
- 維持費用はいくらかかるのか
- 国外から口座にアクセスできるか
- 国外から口座を閉じられるか
上記は言い換えれば帰任後もアメリカの銀行口座を維持することのデメリットでもあり、意外に見落としがちな点があるので、以下で詳しく解説していきます。
①維持費用はいくらかかるのか
アメリカの銀行口座は、一定の条件を満たしていないと口座維持手数料がかかることが多いです。
駐在中はDirect Deposit(給与振込口座)になっていたり、最低預金額を上回っていて口座維持手数料がwaiveされていることが多いです。
しかし、帰任が決まり給与振込口座ではなくなり、更に口座残高も少なくなると、今までwaiveされていた手数料が発生してしまうことがあります。
例えば、チェース銀行の場合以下のような条件が課されています。
$12 monthly service fee OR $0 with one of the following each monthly statement period:
- Electronic deposits made into this account totaling $500 or more, such as payments from payroll providers or government benefit providers, by using (i) the ACH network, (ii) the Real Time Payment network, or (iii) third-party services that facilitate payments to your debit card using the Visa® or Mastercard® network
- OR a balance at the beginning of each day of $1,500 or more in this account
- OR an average beginning day balance of $5,000 or more in any combination of this account and linked qualifying deposits(Opens Overlay)/investments
【超意訳】毎月500ドル以上の給与が振り込まれるか、毎日1,500ドル以上の残高を維持できれば12ドルの口座維持手数料は免除します。
Source: chase.com
維持手数料は銀行によって異なりますので、必ずチェックしておきましょう。
②国外から口座にアクセスできるか
次に重要なのは、アメリカから出国したあとも口座にアクセスできるかという点です。
例えば日本に帰ってからオンラインバンキングにログインしようとすると、二段階認証のため、SMSでワンタイムパスワードが送られてくることがあります。
多くの金融機関ではアメリカの電話番号しか登録できないため、日本ではSMSが受信できず、事実上口座にアクセスできないという事態が発生します。
また、そもそもアメリカで使っていた電話番号を帰任時に解約してしまうケースもあるでしょう。
国外からのアクセスを維持するための手段としては、以下のような方法が考えられます。
- アプリで生体認証をONにすることで二段階認証をスキップする
- アメリカの電話番号を維持しローミングでSMSを受信する
- SMSではなくEmailで二段階認証ができる銀行を使う
口座の維持自体は簡単ですが、「口座へのアクセスを維持する」のは意外と難しいという事実は認識しておく必要があります。
③国外から口座を閉じられるか
最後に、用済みになった口座を日本にいながら解約することが可能かという点も重要です。
仮に口座の維持手数料がかからず、残高がほぼ0ドルの状態であれば、そのままにしておいて自然消滅してしまっても困らないかもしれません。
しかし、一定額以上の預金が入っている場合、そのまま口座のコントロールを失ってしまうのは死活問題です。
近いうちにアメリカに旅行などで戻ってくる予定があれば別ですが、ほとんどの場合は日本から口座を閉じることになると思います。
そこで、電話で手続きが可能なのか、支店に出向かなければならないのか、オンラインで手続きが可能なのかなど、事前に解約のプロセスを調べておくのが無難です。
まとめ
以上、アメリカ駐在終了後、アメリカの銀行口座は維持すべきか?という問に対して、筆者が考えていることをまとめてみました。
ハナからメリットが少ないという点に加え、長期で口座を維持するための工数がそれなりにかかるということが分かっていただけたかと思います。
一方で、やっぱり一定期間は維持したいという結論に至る場合もあるかもしれません。
その場合、本記事で取り上げたポイントに注意しながら、帰国後に苦労をしないでいいような段取りを組めるよう、その手助けになれば幸いです。
尚、今回の記事の主旨とは異なり、「どうしても長期間に渡ってアメリカの銀行口座を維持したい」と考える方には、以下の記事をおすすめしております。
➡ 【帰任予定者必見】帰国後も維持できる銀行口座はコレ!もう他のブログは読まなくていいです。 - 米国の僻地で暮らす駐在員のブログ
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