アメリカに赴任して数年が経過しましたが、未だにアメリカのチップ文化には慣れません。
特に、レストランでの食事の際には、チップ以外にも日本では馴染みのない暗黙のルールやマナーなどが数多く存在し、知っておかないと恥をかくこともしばしば。
駐在員という立場で会社を代表して渡航する訳ですから、同席者から見て失礼のない最低限の振る舞い方を心得ている必要があります。
この記事では、アメリカにこれから渡航するという人はもちろん、既に住んでいるという方まで、レストランでのスマートなチップの払い方から知っておきたいマナーまで、日本と異なる部分にフォーカスを当ててご紹介していきたいと思います。
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日本と異なるレストランでのマナー
チップという最大の違いよりも以前に、初めてアメリカに来た人が陥りがちな罠に付いて触れておきたいと思います。
今から紹介することは、レストランはもちろん会食の場などでも知っておきたいマナーですので、読んでおいて損はないと思います。
①サーバーを呼ばない
アメリカに住んで長い方からすると常識すぎて逆に忘れてしまいますが、アメリカに来たばかり人は必ずといっていいほど陥ってしまう罠がこれです。
日本のレストランだと「すみませーん!」と大声を出すか、備え付けのベルを鳴らして店員を呼びつけますが、アメリカではサーバー(ウエイターやウエイトレスの事を指す)が自分の卓に巡回して来るのを待つのがマナーです。
例えば、お店に入って席に案内され、とりあえずビールで!と思ったとしても、その辺の店員を呼びつけてはいけません。
着席をしてしばらくすると、自分のテーブルを担当してくれるサーバーが挨拶にくるので、そこでようやく注文をすることが可能になります。
食事が始まった後も、気の利いたサーバーは担当のテーブルに常に目を配り、グラスや皿が空けば向こうから声をかけてくるので、我々から無闇矢鱈と声をかけることはしません。
どうしても急な用事がある時などは、担当のサーバーにワザとらしいアイコンタクトを取るなどして、来て欲しいオーラを空気に乗せて伝える技術が大事です。
このときも、必ず担当のサーバーとコンタクトを取るようにして、違う卓のサーバーを呼ばないようにしましょう。
筆者も昔は海外のレストランで働いていたことがありますが、自分の働きで貰えるチップの金額が決まるので、私が同僚のテーブル(=テリトリー)に介入してくることを非常に嫌い、一度やむを得ず親切のつもりで介入したら盛大に泣かれて大問題になった経験があります。
②手を伸ばして遠くの皿を取らない
これはどちらかというと現地の人と会食をするときのマナーですが、遠くにある皿を身を乗り出して自分の方に引き寄せるのは行儀が悪いとされているみたいです。
そもそも普段アメリカで食事をするときは、各人がそれぞれに食べたい料理を頼むことが多く、日本の居酒屋のように全員の総意で頼んだ料理を全員でちょびちょび分け合うスタイルは珍しいと感じます。
とはいえ、そのような食べ方がないわけではなく、ファミリースタイル(料理をシェアして食べること)と伝え、みんなでシェアして食べるから小皿が欲しいといえば、サーバーは取り分け用の小皿を持ってきてくれます。
そして、このファミリースタイルのときに注意したいのが、冒頭に述べた点です。
一度、私の目の前にあるサラダが置いてあり、ふと隣の同僚から「そのサラダ取って貰っていいですか?」と頼まれたとき、「いやいや、手を伸ばせば取れるだろw」と思ったことがあります。
その後も事ある毎に皿を取ってあげることが続きうんざりしていたのですが、後々知った限りでは、それが最適な振る舞いっぽいということでした。
遠くにある料理やナプキンなどのものを取るときは、十分に注意しましょう。
③音を立てて食べない
最後に、これは特に麺ものを食べるときですが、「啜る」という行為は特に気をつけるべきだと思いました。
最近ではアメリカでもラーメンなどが人気を博しており、アメリカ人で賑わうローカルなラーメン店もたくさん林立しています。
日本だと麺を啜ることが美徳で、特に蕎麦なんかはズルっと行くのがいい的な価値観がありますが、国が変われば当然見方も変わるということです。
例えば、口をあけてクチャクチャと音を立てて食べるのは日本では「クチャラー」と揶揄され誰もが気をつけるマナーですが、アメリカ人からすると麺を啜るのも同じように「クチャラー」として見られているかもしれません。
もちろん、「啜る」という行為全体を卑下するつもりはなく、PTOに応じて気を遣えることが大事ということをここでは伝えたいと思って書いてみました。
レストランでのチップの払い方
アメリカに来てすぐのときに、最も戸惑うのはチップという概念でしょう。
ここではレストラン等の飲食店におけるチップの払い方について、自分の知識の限りで解説していきたいと思います。
①明細書を受け取る
上記で説明した、サーバーが付くタイプのレストランでは、一通り食事が済むとサーバーが食事内容を記載した伝票を持ってきてくれます。
もちろん、このときも「すみませーん!お会計お願いしまーす!」と叫ぶようなことはあり得ませんので要注意です。
一般的なレストランでは、以下のように食事の注文内容が書かれた明細書が発行されるはずです。
②内容確認と支払手段の決定
記載の内容を確認し、請求内容に間違いがないようであれば、デビットカードやクレジットカードをトレイの上に添えて、サーバーの目に留まりやすいテーブルの端の方に置いておきましょう。
現金で支払う場合は適当な金額を置いておけば大丈夫です。
尚、通常はこの段階ではまだチップの支払いは行いませんので、深く考えずにとりあえず支払いを行いましょう。
しばらくすると、サーバーが戻ってきてこれを回収し、レストランのレジに戻りポチポチと決済を済ませてくれますが、くれぐれも大声で(以下略
③チップの金額を決めて支払う
会計が終わると、以下のようなTIP欄があるレシートとペンを持ってきてくれます。
このとき、何枚かごちゃごちゃとレシートを貰うと思いますが、上記の写真のように”Merchant Copy(店側の写し)”と書かれたものを探しましょう。
- カード払いの場合:Merchant CopyのTIP欄に支払うチップの金額、TOTAL欄にチップを含んだ最終的な金額を記入し、Signature欄にサインをします。上記の写真のケースだと、最終的に計70ドルがカードに請求されることになります。
- 現金払いの場合:レシートへの記入は不要で、チップ分の現金をトレイの上に残しておくだけで大丈夫です。例えば上記の写真のケースだと、会計時に60ドルで支払って49セントのお釣りが来ると思うので、財布から更に10ドル札を取り出して置いていくのがスマートな支払い方だと思います。或いは会計時に100ドル札で支払い、お釣りの10ドル札を1枚を置いていく感じになるでしょう。
④レストランを出る
上記の作業が終われば、あとはレストランを立ち去るだけです。
我々がレストランを立ち去った後、サーバーは担当のテーブルを片付けにやってきます。
現金の場合は現金を回収して終わりですが、それ以外の場合はレジに戻ってレシートに書かれたチップの金額を先程の会計金額に足して最終的な請求金額を確定します。
このとき、我々が立ち会う必要もなければカードを提示する必要はありません。
そのためのレシート記入であり、直筆サインであると理解すれば分かりやすいでしょう。
⑤適切なチップの金額は?
慣れない人にとって一番悩ましい問題は、適切なチップの金額です。
筆者もネット上で色々な情報を収集しましたが、絶対的な決まりはないようです。
過去の経験と一般論からすると、チップの相場は地域やレストランのレベルによって様々ですが、最低でも15%〜20%程度を支払い、サービスが良ければ20%以上を支払うのが相場だと思います。
繰り返しますが上記の金額は最低ラインであり、間違っても「ゼロ」などは避けましょう。
料理やドリンクが出てくるのが遅いのは厨房やバーテンダーの問題かもしれませんし、そもそもご飯が不味いのはどうしようもありません。
仮にもし本当にサーバー自身に問題があるようであれば、責任者に伝えて担当を変えて貰うなどして、常に事態が起きたときに解決を図り、チップを支払う段階では円満にレストランを出れるのが基本ムーブだと思います。
Tips:そもそもチップという文化が日本にはないものであり、渡米当初は「日本では無料で享受できるサービスに毎回18%〜25%も払ってられるか!」と思う気持ちもありましたが、最近では「チップの金額に悩むくらいであれば、多めに払っておくべき!」だとすら思い、妻にもチップはケチるなと伝えています。
要するに、レストランで食事をすることを選んだ時点で常識的に15%以上は追加で発生すると見積もっておくべきものであり、もしチップを払いたくないのであれば、そもそもチップ不要のファストフードや自炊で済ませるべきなのです。
昔、数ドルをケチって後で本当にあれで良かったのだろうかと思い悩んだりしていましたが、その数ドルでサービスをしてくれる彼らが気持ちよく一日を過ごしてくれ、自分も正しいことをしたと割り切れる状況の方が健全だと気付いたのでした。
場数を踏んで金額の相場が分かるようになるまでは、多めに払って割り切るのも大事かもしれません。
まとめ
以上、アメリカのレストランにおける基本的なマナーから、チップの払い方までを解説してきました。
私自身、渡米直後はこの辺のことがほんとに分からなかったので、非常に苦労したのを覚えています。
そして、新しくやってくる同僚などもやはりこの辺のことには戸惑うようで、この記事もきっと誰かの役に立つだろうと確信しております。
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