アメリカでは早くも確定申告の季節がやってきました。
アメリカの確定申告は駐在員であっても個人で書類を揃えて、会社が契約している会計事務所などに依頼をするらしく、私も絶賛書類収集中です。
今まで幾度となく赴任予定者向けへのお役立ち記事を書いてきましたが、今回は「過去の自分に何か一個だけアドバイスできるなら絶対コレ」というものです。
ちょっと煽りっぽいタイトルではありますが、当ブログ史上最もアメリカ駐在の内示が出ている赴任予定者の皆様に読んで貰いたい記事にしたいと思います。
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恐怖の海外資産開示義務制度(FBAR)について
いきなりよく分からない言葉からスタートとなり申し訳ありません。
「海外(日本を含めアメリカ以外の国)にある貴方の資産をアメリカ政府に開示しないといけない制度」というと少しイメージが沸くかもしれません。
対象者となった場合、年に一回、日本にある金融資産を洗いざらい報告しないといけません。
駐在員の場合、会社が契約している会計事務所に依頼して、春の確定申告の際にFBARもまとめて行うことが多いようです。
海外資産開示義務制度(FBAR)の対象者
このFBARという制度の対象者となるのは、以下の要件を満たす場合です。
[…]米国籍保持者、永住権保持者、税法上の米国居住者、および税法上の米国非居住者で内国歳入法6013条あるいは7701 条 (IRC 6013(G) or (H) or IRC.7701(b)(4)) に基づいて居住者としての申告を選択した者[…]
この記事の想定読者層である日本人のアメリカ駐在員も、殆どの場合で税法上の米国居住者となるためFBARの対象となるのです。
更に、申告が求められる要件として以下が示されています。
一暦年(1月1日から12月31日)のいずれかの時点において、保有する全ての米国外口座について、それぞれの最高残高の合計が$10,000を超えた場合、[…]FBAR提出による口座開示の義務を負います。例えば、A銀行に$5,000、B銀行に$5,000、C銀行に$5,000の口座を保有した場合、合計金額が$10,000を超えるため、ABC全ての口座を開示する必要があります。
つまり、駐在員としてアメリカに居住しており、対象の年に日本(を含む米国以外の国)に10,000ドル以上の預金が存在したことがある場合は、保有している全ての口座を報告しないといけないのです。

恐らく日本に全く貯金がないという人を除いて、殆どのアメリカ駐在員が対象となるものだと肝に銘じておきましょう。
配偶者の口座も報告の対象となるので注意
ちなみに、こちらの申告は配偶者の口座も報告の対象となるため注意が必要です。
要件は上記と同様で、配偶者名義の日本の口座に10,000ドル以上が一瞬でも存在していたのであれば、配偶者が保有している全ての口座を洗いざらい報告する必要があります。
結婚前に貯めていた貯金、パートナーに内緒で貯めていたヘソクリ等、全て報告の対象となるので夫婦間での隠し事は十中八九バレると思っておきましょう。
渡航前にやっておくべきこと
上記で説明した通り、恐らくこの記事の読者層は殆どが対象となるFBARですが、自身の反省を活かして日本にいる間にやっておくべき事を以下に挙げたいと思います。
- 休眠口座や不要口座の解約
- 海外から口座情報を閲覧するためネットバンキングへの登録
- 残す口座は実家など郵便を受けられる住所に変更
休眠口座や不要口座の解約
FBARの報告対象となった場合、保有している全ての口座の番号、残高、利息、銀行名、住所など、様々な情報を提供しなければなりません。
実際にやると結構面倒な作業で、はるか昔に開設した残高ゼロの休眠口座なども報告の対象となるのが非常に腹立たしいのです。
筆者は日本にいた時に、お得なキャンペーンに釣られて作れる限りの銀行口座を持っていたので、現在進行形で辛いです。
そこで、日本にいるうちに不要な銀行口座は解約しておくのか吉だと思います。
海外から口座情報を閲覧するためネットバンキングへの登録
報告内容には、各口座の預金残高や預金が生み出した利息なども含まれています(筆者の場合なので他の会計事務所は不明)。
そこで、海外から残高や利息情報を確認する必要があるのですが、やはりネットバンキングや携帯のアプリなどを使って詳細にアクセスするのが一番手っ取り早いです。
というより、他に海外から口座詳細を確認する方法があるのかという疑問すら湧いてくるレベルです(通帳を友人に預けて必要に応じてみてもらうとかですかね?)。
レガシー銀行の場合、基本的に日本にいないとネットバンキングに登録できないと思うので、赴任前にネットバンキングに登録する、或いはネットバンキング自体が存在しないのなら思い切って解約してしまうという取捨選択を行いましょう。
【注意】口座を解約した翌年は報告義務がある
解約した方がいいよと散々煽っておきながら恐縮ですが、解約したら報告しなくていいわけではありません。

例えば上の図のケースだと、赴任前に面倒を避けるために日本のA銀行を解約しています。
赴任後初めての確定申告時点ではその口座はもう存在しませんが、FBARの報告対象者となった場合は、なんと前年に存在した口座全てが報告対象となるようです。
なので、翌年の確定申告までは、解約した口座の詳細情報も忘れないように控えておく必要があります。
賢い皆様であれば、「え、じゃあわざわざ解約しなくてもいいじゃん!」と思うかもしれませんが、駐在の任期が続く限り確定申告はやって来るので、少しでも面倒は減らしておくのが得策なのです。
さもなくば、今後もずーっとしんどい筆者の二の舞を踏むことになります。
残す口座は実家など郵便を受け取れる住所に変更
そして、非常に大事なことですが、残すと決めた口座に紐づく住所は実家など確実に郵便が届く住所に変更しておきましょう。
転送届を出しても転送期間には限りがありますし、重要なお知らせは転送不要で送られてきたりすることがあります。
ですが、帰国後に再度住所の変更作業を行うことになりますし、ネットで簡単に住所変更ができればいいものの面倒な作業全体を考えると、この機会に手持ちの休眠口座は解約するのが益々正しい選択になる気がします。
まとめ
前回のクレジットカード断捨離の記事でも書いた通り、海外赴任は人生の転機です。
➡ 海外赴任が決まったら作るクレカと捨てるクレカ。渡航前のクレカ整理のポイントを解説します。 - 米国の僻地で暮らす駐在員のブログ
今まで惰性で続けてきたことに見切りをつけ、きちんと身辺整理をすることで、その後のあらゆる物事が格段に進みやすくなるでしょう。
日本の銀行口座もその一つで、面倒な申告作業を少しでも減らすために、海外駐在を機に思い切って断捨離をしてみては如何でしょうか。
もっと早く知っておきたかったと後々になって後悔しないよう、この記事が皆様の赴任準備に少しでも役立つことを祈っております。
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